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読んだ本のシンプルなまとめ

「ベジタリアンの医学」

 

ベジタリアンの医学 (平凡社新書)

ベジタリアンの医学 (平凡社新書)

 

 

ベジタリアンについて、医学的な視点から書かれた本。

著書がアメリカで活動しているので、アメリカ人のデータに基づいている記述が多い。
 
結論としては、「適切に準備されたベジタリアン食」は、健康の維持・増進と病気の予防に役立つ、というもの。
「適切に準備」とは、多様性とバランスを考えることで、多種類・多品種の食材、食品を栄養学的にバランスよく摂取することが基本となる。これは当たり前だけど非ベジタリアン食にも当てはまることである。
 
病気予防の実例として、ベジタリアンは、統計的に以下の生活習慣病にかかる割合が少ないということだ。
原因は、肉によるタンパク質や脂質の取り過ぎがなくなること、肉を食べないことで様々な病気に効果的な野菜の栄養素が摂る機会が増えること、等が考えられるが、総合的な食生活として非ベジタリアン食よりも病気予防という点では優れているということだろう。
 
では実際に「適切に準備する」には、どうするのか?
そのためには、以下の3点を心がける。
  1. 摂取エネルギーの設定
  2. 三大栄養素の配分
  3. ビタミン・ミネラルの摂取量の確認
特に意識すべき点は、ビタミン・ミネラルだと思われる。肉から摂取していた栄養素をどこかで補う必要があるからだ。
 
以下、ベジタリアン食の栄養素について本書の内容をまとめておく。

タンパク質

植物性たんぱく質の利用効率は、動物性に劣るが、組み合わせてとることで必須アミノ酸を摂取できるため、問題ない。
アミノ酸は蓄えられるので、一度の食事で組み合わせなくてもよい。
大豆は必須アミノ酸全て含む。
菜食ではタンパク質を15%ほど多めにとった方がよいが、ラクト・オボベジタリアン、ペスコベジタリアンは特に意識する必要はない。

脂質

動物性脂肪と植物性脂肪の違いは、動物性は主に飽和脂肪酸、植物性は不飽和脂肪酸が多い。
また青魚も不飽和脂肪酸が多い。
ヴィーガンやラクト・オボベジタリアンリノレン酸を意識してとる必要がある。ペスコベジタリアンは、青魚を取ればDHAが取れるので大丈夫。

ビタミン

ビタミンB12は、所要量を得るために動物性食品の利用が必要な唯一の必須栄養素。
ラクト・オボベジタリアンは問題なし。ヴィーガンサプリメントの使用を推奨。ペスコベジタリアンは、魚介から摂取できるので大丈夫。
藻類や大豆のビタミンB12は不活性なので当てにしない方がよい。
ビタミンB12は体内に貯蔵されているので、菜食始めたばかりだと摂取が不足してもしばらく大丈夫だか、後から欠乏症になる危険がある。そのため、ちゃんと所要量を摂取できているか意識して注意する必要がある。
ヴィーガンビタミンDも注意すること。

ミネラル

鉄については、菜食が鉄分不足を指摘されるのは、植物性は非ヘム鉄で利用効率がよくないため。ビタミンCと一緒にとるとよい。
取りすぎるとだめなのでサプリは不要。
亜鉛については、穀物や豆類のフィチン酸が吸収を阻害してしまう。しかし、魚介に豊富なため、ペスコベジタリアンでは問題なし。
カルシウムは、ヴィーガンでも問題なし。
大豆、豆乳、ブロッコリー、ケール、オクラなどでとれる。

ファイトケミカル

呼吸で取り入れた酸素の1,2%は活性酸素で様々な障害をもたらす。また活性酸素は運動時に大量に生じる。
そのため抗酸化成分・酵素が大切と言われている。
植物に含まれるこれらの成分をファイトケミカルという(Phytoは植物のこと)。
ファイトケミカルは植物の色や香りの成分なので、たくさんの種類のファイトケミカルをとるには、違った色の野菜や果物を取れば良い。
ブルーベリーのアントシアニンは目に良い。冷凍でも良いので取り入れやすい。

その他気になった点

ペスコベジタリアンの注意点としては、食物連鎖の上位に位置するマグロなどの大型回遊魚は水銀の蓄積が心配なので、アジやイワシなどの小型の魚がお勧め。つまり、植物プランクトンを食べているようなベジタリアンの魚を選ぶ方がよいということ。
 
和食 は、そのままでは適切なペスコベジタリアン食とは言えない。塩分が過剰に、なりやすくたんぱく質が不足しがちだそうだ。
減塩を意識して、豆腐等の大豆製品や魚等でタンパク質を摂る等、和食をベースに工夫すればOK。
 
ベジタリアン食で不足しがちなものとして、必須アミノ酸、カルシウム、鉄、亜鉛ビタミンB12は意識して摂った方がよい。
 
持久系アスリートは体重1キロあたり、1.2-1.4グラムのタンパク質が必要。
 
フルータリアンやローフードだけたいった不適切な食事は栄養学的には問題あり。
おひたしなど加熱した野菜も摂った方がよい。
特に小児は栄養障害が出やすいので注意する。
 

感想

元々ランニングのために、肉を控えることを目的として読んでいるので、肉を食べないことで、栄養学的に問題がないのかを知りたかった。

読後の全体的な印象としては、ベジタリアンは健康によいが、ヴィーガンだと不足する栄養素を補うためのサプリメントが必要なことがあり実践が難しそう。
ラクト・オボベジタリアンは栄養学的には全く問題ないが、日本で外食することを考えると、やはり実践するのが難しい。
上記2つに対して、ペスコ・ベジタリアンは栄養学的にも問題はなく、外食も日本では困らない。欧米で一般的なベジタリアン食とは言えないが、肉を摂る非ベジタリアン食に比べて、病気予防等の恩恵を受けつつ、日本で実践が容易なので現実的な選択肢だと思う。
実際に3週間ほど肉から魚に切り替えてみて、筋肉量を増やしつつ、体重・体脂肪をかなり減らすことに成功したので、このままベスコ・ベジタリアン食を続けてみようと思う。